乱読派の読書メモ

本好きの本好きによる本好きのための読書記録

ラヴレター
岩井 俊二
角川書店
1995-03



◆透明な色彩の岩井ワールド


映像作家として有名な岩井俊二氏の著

肩書にふさわしい透明な色彩の恋物語です。



正直変哲のない恋愛ものはあまり得意ではありません。

ですので、少し辛口の感想になります。

誉める意味合いではなく、失礼ながら少女向けの小説を読んだような感触。

好みの人は好みなのかもしれないが、個人的には映像でも見たいとも思えません。



◆甘酸っぱい青春時代をそのまま


映画では中山美穂さんが一人二役で主人公を演じています。見たことはありません、すみません。

小説では細かい心情が描かれています。

思春期独特の、どこか定まらないふわふわとした恋心。


ああもう、甘酸っぱい!

そういう青春時代の不安定だからこそ楽しい、みたいな感情を苦手でない人にとっては、おそらくどっぷりと浸かれる良質な本です。


それはもう、個人的に苦手ってだけの話ですので。


◆美しいことは美しい


苦手であっても、その美しさは評価できます。
恋愛ものが好き、だけでなく、誰しも心のどこかにひっそりと隠し持っている若かりし日の甘酸っぱさやほろ苦さ、みたいなものの扉を叩いてくれる感じはあります。

わたしのように苦手な人の心の扉にまで手が届く、という意味では、岩井氏はものすごくすぐれた書き手さんなのだ、とも言うことが出来そうです。

またさらに年月が経ったら読み直してみたいです。
そのときはまた、印象が変わるかもしれません。


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◆第4回(2005年) 『このミステリーがすごい!』大賞受賞



ドラマ化もされた海堂尊氏の大ヒット作。

ミスでべた褒めだったので、実は以前から読みたくて読みたくて、めちゃめちゃ期待してました。


…いやまあ、期待を大きく裏切らない程度にはしっかり読めたし面白かったですが。

正直ちょっと期待値大きすぎでした。期待はしすぎちゃいけませんね。



とはいえ、筆もしっかりしているし、何より病院モノ裁判モノはなんだかんだ言っておもしろく仕上がっていることが多く、舞台で一本です。


専門知識を有していないと描かれにくい場所を舞台に取ると、それだけでアドバンテージ感はありますね。


◆マジメな時ほど笑っちゃう、やつ



舞台も病院、終始シリアスな展開なのですが、登場人物たちの個性も手伝って、ところどころにコメディタッチな描写も散りばめられています。

そのために緊張しすぎずいいペースで読み切れる、というか。

とてもよいアクセントになっていました。


笑っちゃいけない真面目なシーンほど、人っておかしくなっちゃうものですよね。

そういう雰囲気があります。



それと、病院ものや裁判ものは、楽しく読みながら対象について学ぶことができるのでお得感満載です。

勉強!ってなるとなかなか頭に入りませんが、小説の中からだと気が付くと知識として自分の物になっていることもあり、これぞ読書の喜びのひとつだなと思います。



◆エッ、これがデビュー作!?



作品としてはもちろん面白かったですが、いわゆる名だたる小説家たちと比較してしまうと「少し物足りない」感じであったことは確かです。

でも、これがデビュー作と言われるとなるほどそれはすごい!今後どれだけ伸びるのか空恐ろしい!



このあとも継続的に書かれているので、読んでいきたいです。


漫画もそうですが、長期連載になると1巻の頃と最近の絵柄がまったく異なっていたりしますよね。
小説にも言えることだと思います。
そうして作者がどんどん「成長」していく過程を見られるのはとても幸せなことですね。


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マボロシの鳥
太田 光
新潮社
2010-10-29


◆毒舌が売り、爆笑問題・太田光の小説デビュー作


爆笑問題自体は好きで、その名義で書かれているものも過去にいくつか読んでいます。

筆の質はとても高く、たくさん本を読んでらっしゃるんだろうなと感じられます。


でも、毒舌キャラの太田さんを期待して読み始めると文字通り肩透かしを食らいます。

ふんわりとやさしい印象の寓話の数々。毒舌なんてどこ吹く風です。


◆ところどころに個性は滲み出ている
 

全9編の、それぞれ独立した短編集。

多少オリジナリティには欠ける印象はありますが、表題作にはよく個性が出ていました。

何が書きたいのか、が直球で伝わってきます。


ただ、ストレートすぎるあまり、ところどころくどいと感じる部分もありますね。


個人的には講談調の作品がもっとも気に入りました。

すばらしいリズム感と疾走感、コレでストーリーがもうちょっと骨太だったらなおよかったが、今後に期待です。

色物一本ではなく今後もやってほしいスタイル。何度も声に出して読みたくなります。


◆やさしくて美しい寓話の数々だからこそ…


どの短編も、愛とやさしさに溢れ、シンプルでストレート。
書き手の太田さんをテレビなどで見てその人柄に触れていると、文章と人柄がちょっとじょうずにリンクできない感じを受けます。

「太田さんの文章」を期待して読むとイメージとかけ離れ過ぎていて退屈に感じるかもしれませんし、「誰でもない誰か」が書いたものとして読むと、少し物足りなさを感じる部分もあります。

ただ、人生の美しい好ましい部分を懸命に描こうとする意志は伝わってきて、とてもとても美しい本であったことは確かです。

子供の頃に読んでいたら、もっともっと素直にすてきな本だった!と言えるのかもしれません。


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