乱読派の読書メモ

本好きの本好きによる本好きのための読書記録

長い長い殺人 (光文社文庫)
宮部 みゆき
光文社
1999-06





◆主人公:財布!


宮部みゆき氏の異色といえるミステリ作品。

財布を語り口にストーリーを組み上げて行くスタイルで、作者の技術の高さにただただ感心させられました。

飽きさせず止まらせずちょうどいいスピード感で読み切れます。


「財布の視点」で人間たちのあれこれが描かれるという特殊な手法なので、「持ち主側」の感覚ではちょっと気づかないような描写も多くて面白いです。



◆持ち主だっていろいろいるもの


財布の中のお金には、それがどうしてそこにおさまっているかなんてそこまでの道のりは当然描かれてはいません。でも、お財布がモノ言う存在だったなら…?

刑事、犯罪者、死者、それぞれの財布は持ち主の行動や現金がどこから来たのか知っている。


たしかにお財布と言うのは生活の中でもっとも持ち主に密着して暮らしていると言っても過言ではありません。
自分の生活のあんなこともこんなことも見られている、知られている…って考えると、ちょっと恐ろしい気持ちになりますね。


◆持ち主が女性だと女性口調になる


擬人化された財布の語り口は、それぞれの持ち主の口調や調子になっています。
そのことで「財布が語っている」のでありながら、「財布の持ち主」がどういう人物なのかがよくわかるようになっていて、引き込まれます。


読み物として面白いのはもちろん、自分の持ち物をふと見直してしまうきっかけにもなりそう。
自分のお財布に名前でもつけて愛でてあげたくなること請け合いです。

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ゲゲゲの女房 (実業之日本社文庫)
武良 布枝
実業之日本社
2011-09-09



◆水木しげるの夫人、武良布枝氏の半生を描いたエッセイ


誰もが知ってる「ゲゲゲの鬼太郎」といえば漫画界のオバケ漫画ですね(両方の意味で)。

これを描いた超がつく鬼才、水木しげる氏の奥方が、その人生を振り返って書かれたエッセイです。


貧乏からはじまって、漫画に人気が出てきて、妖怪研究へとエスカレートする鬼才のそばでずっと見守ってきた氏が、その移り変わりを赤裸々に描いたものです。



◆NHK連続テレビ小説の原案に


わたしも例外でなく、NHKの連ドラでこちらの本を知りました。

ドラマはもちろん楽しかったですが、本と読み比べると多少異なる、創作の部分もあったように思います。

でもそれらはどれも、愛と尊敬に溢れていて、ドラマの制作に携わった人たちが「ゲゲゲ夫妻」を敬愛していた証拠のようにも思えました。


順番としては、本を読んでからテレビドラマを見る方が楽しめそうです。



◆「変わり者」の域をはるかにオーバーしている夫


そもそも売れない漫画家だった頃から、水木しげる氏はやはりどこか変わり者であったことは間違いないでしょう。


赤貧青年の妻から超売れっ子漫画家の妻へと立場が大きく変わっても、変わらぬ温度で変わり者の夫に寄り添い続けることができたのは、ご本人の謙虚な態度と忍耐はもちろんですが、ご主人水木氏の突き抜けた鬼才ぶりだったのかな、などと推察してしまいます。




正直それほど筆がよい部類ではないですが、さらっと読めるのは、全編を通して嫌味のない「昭和の女房」がよく描かれているからだと思います。

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青の炎 (角川文庫)
貴志 祐介
KADOKAWA
2002-10-23



◆青く切ない心象風景を見事な筆で描き上げる


映画化された貴志祐介氏のミステリー作品。ちなみに映画は未視聴です。


しばらく活字から離れていたためこういったジャンルは久々に読んだ感がありますが、これはものすごい勢いで読み終わりました。面白いです!



主人公が高校生ということもあって、全編を通して優秀な頭脳に稚拙な心理、不安定で一途な精神感が貫いていて、筆も最上級に快く読後の満足感は非常に高かったです。



◆達成感の得られない目的だから


完全犯罪に挑む少年の苦しいまでの胸の内と葛藤がよく描かれていて、読んでいるほうも胸が苦しくなりました。すさまじい緊迫感です。


貴志氏の作品はまず完成された完全犯罪ありき、な印象がありますし、実際いうまでもなくそこが読みどころではあるのですが、この作品は高校生の主人公に寄り添った「青さ」が独特の清涼感と寂寥感を醸しだしていたように思います。


張り巡らされた見事な智謀で目的を達成しても、そこには達成感はなく。

ラストの行動まで一貫して、青い気持ちが切なかったです。



◆より「視覚的」


映画の映像をチラ見したことがあったのでイメージがちらついてしまい、舞台が湘南という見知っている場所であったこともあり、終始視覚的に読み進めました。


映像が脳内に広がる作品は読んでいてとても面白いです。一粒で二度も三度も楽しめる気持ち。


なので、予備知識のない作者の別作品をすぐにでも読みたいです。




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