青の炎 (角川文庫)
貴志 祐介
KADOKAWA
2002-10-23



◆青く切ない心象風景を見事な筆で描き上げる


映画化された貴志祐介氏のミステリー作品。ちなみに映画は未視聴です。


しばらく活字から離れていたためこういったジャンルは久々に読んだ感がありますが、これはものすごい勢いで読み終わりました。面白いです!



主人公が高校生ということもあって、全編を通して優秀な頭脳に稚拙な心理、不安定で一途な精神感が貫いていて、筆も最上級に快く読後の満足感は非常に高かったです。



◆達成感の得られない目的だから


完全犯罪に挑む少年の苦しいまでの胸の内と葛藤がよく描かれていて、読んでいるほうも胸が苦しくなりました。すさまじい緊迫感です。


貴志氏の作品はまず完成された完全犯罪ありき、な印象がありますし、実際いうまでもなくそこが読みどころではあるのですが、この作品は高校生の主人公に寄り添った「青さ」が独特の清涼感と寂寥感を醸しだしていたように思います。


張り巡らされた見事な智謀で目的を達成しても、そこには達成感はなく。

ラストの行動まで一貫して、青い気持ちが切なかったです。



◆より「視覚的」


映画の映像をチラ見したことがあったのでイメージがちらついてしまい、舞台が湘南という見知っている場所であったこともあり、終始視覚的に読み進めました。


映像が脳内に広がる作品は読んでいてとても面白いです。一粒で二度も三度も楽しめる気持ち。


なので、予備知識のない作者の別作品をすぐにでも読みたいです。