◆四季を通して


1年を通して雛形となる形を備えた連作ミステリー。

この人の文章は以前どっかで短編を読んだきりだったのだけど、思ったよりスマートでした。

表現もところどころグッとくるものもあって、もっといろいろ読んでみたい気持ちにさせられます。

 


春夏秋冬の四話それぞれの冒頭にはお約束の雛形があり、タイトルもそれぞれ登場人物にも係ったシャレた造りになっています。

個性的でコミカルな登場人物も、どぎつすぎない設定と描写も魅力的です。



◆事件が悲劇的すぎないからふざけた推理も冴えわたる



ここで起きる「事件」は、連続殺人みたいな派手なものではありません。

ちょっとした人間同士のズレから起きるささやかな事件がその主。

ともすれば退屈に陥る危険性のある「舞台」で、じょうずに読者の手を引いてくれます。


カササギ氏のズレた推理と、そこへ修正する主人公の黒子の努力が思わず読み手の「ニヤニヤ笑い」を誘います。



◆愛すべき若者たちの魅力満載



3人の主役級+1人の強烈な脇役という構図で話が進んでいくのですが、この3人の主役級はいずれも言ってみればイマドキの若者。

この彼らのなんと愛おしいことよ。


この本には昭和のホームドラマのような温度感があります。

ご都合主義のところやコミカルに過ぎる部分さえ、アハハと笑って許せる空気感。

それらもひっくるめると、この本はミステリーやサスペンスというカテゴライズには当たらないかもしれません。



全体を通して、べたつきのないサラッとした読後感です。

それぞれ1作ずつでも楽しめますが、4作にしっかり流れがあり、コンパクトにまとまっていて清涼感のある作品でした。