◆「なぜこんなに面白いのか?読めばわかる」


これは横山光輝氏の漫画版のほうに載っていたアオリ文。
吉川英治氏の作品を原作として描かれた全50巻のほうですね。
肝心の吉川氏の三国志は、文庫版で全8巻でした。


三国志自体はほんとうに数多く描かれていて、各作者の推測や創作なども混じりあって、どこまでが実際の話だったのかはつかみにくい部分があります。
おおもとのだいたいの流れは史実にのっとって書かれているでしょうが、たとえば貂蝉は架空の人物だというのは有名な話ですね。
事実と空想が入り混じって、三国志の世界はひとつの世界として完全に一人歩きしてしまっているほどです。
そしてそれがたまらなく面白い。


描かれている時代も古いです。何と言っても日本ではまだ卑弥呼さまの時代ですものね。
そんなに乖離があるのにこれだけ多くの人に喜んで読まれるのは、やはりその面白さが「人間」によるものだからでしょう。
わけても吉川氏の筆による三国志の登場人物たちは実に誰もが生き生きしていて、実在どころかいま現在どこかに生きているかのようにさえ思えます。



◆「蜀びいき」が物語を盛り上げる


読まれた方はご存知でしょうが、吉川版の三国志は蜀が主役の完全蜀目線です。
前半は劉備玄徳、後半は諸葛亮孔明が主人公。
日本人の大好きな「判官びいき」精神が余すところなく用いられている感じがします。


魏・曹操の派手すぎる行動力や、呉・孫家三代の妙な合議制精神よりも、弱者が忠義と誠実によってだんだん力をつけていくさまが日本人に広く受け入れられたのではないかと思います。

個人的には蜀は好きではありませんが、物語として読んでいると気が付くと気持ちが蜀に傾いていくのはわかります。実際子供の頃は諸葛亮大好きでしたし。

でも今読むと劉備は非力で弱腰、諸葛亮は傲慢で意地悪、にしか思えませんけどね。



◆魅力的な登場人物がぞくぞく


三国志を語るにあたって、三国に所属していない武将で外せない筆頭は間違いなく呂布でしょう。
彼の天下無双ぶりはだれもが憧れるものです。
もっとも吉川三国志においては蜀の義兄弟を引き立てる要素としてじょうずに使われておりますが。

いまなお人々を魅了し続ける最強の呂布、実は外国人だったのでは?実は体が小さかったのでは?実はすごい賢かったのでは?とかいろんな推察が飛び交っておりますし、これからもいろいろな解釈でいろいろな描かれ方をすると思うと楽しみです。


ほかにもここに挙げきれないほど数多くの魅力的な各地の武将がおりますが、個人的に最も好きな人物は陳宮です。んーマニアックですね。


◆各種メディアとミックスされてますます進化する


漫画になり、アニメになり、ゲームになり。
それぞれのジャンルでそれぞれの解釈をされた三国の英雄たちは、もはや原型がわからないほど勝手に進化を遂げてしまった人もたくさんいますね。

コーエイのFC版三国志からはじまったシミュレーションゲームなどではかろうじてイメージは保たれていた気がしますが、三國無双シリーズなどになるともうファンタジーです。

でもそのファンタジーの中からまた新たな群雄像がつくられていくから不思議です。


三国志は中国ではもちろんですが、日本においてさえ時代を超えて愛される名作となりました。
そしてそれを手伝った一番の貢献者は、間違いなく「三国志を日本人好みに見事に仕立て上げた」吉川英治氏だったのではないかと思います。


三国志の話ならえんえんと書いていたいですが、今回はこのへんで。