乱読派の読書メモ

本好きの本好きによる本好きのための読書記録

2018年08月

奇岩城 (新潮文庫―ルパン傑作集)
モーリス・ルブラン
新潮社
1959-12-02




◆世界のヒーロー、アルセーヌ・ルパン



ルパンの冒険シリーズ第三弾の奇岩城を読みました。

モーリス・ルブラン作で、今回読んだのは堀口大學氏訳によるもの。

 

ルパンといえばルパン3世を連想しちゃう悲しき日本人なのですが、そのルパンのおじいさまにあたる世界の大泥棒ですね。

いや泥棒っていうとちょっとニュアンスが異なりますね、やはり「怪盗」 がいちばん彼にふさわしい冠言葉でしょう。



◆翻訳もの風に書くとこうなる


 

このルパンのシリーズは好きで何冊か持っていますが、やはり古いものだけあって翻訳が凄いです。

まあ昔の翻訳モノはどうしたってそんなもんですし、Oヘンリとか読んでた人は普通に慣れちゃうと思いますが。

 


「ねえ君、きみは僕のしようとしたことを知らなければならないよ、なぜって君、きみがそれを知ろうとすることで僕が何を君に伝えたかったかがおそらくは驚くほど明確にかつ直接的に、それを知ることによって君はそれをより深く理解することができるだろうはずだからさ、まるで僕が実際に君にそう伝えようとでもしたかのように。」

 

とかいう文章がえんえん書かれています。


つまりいわゆる純粋なる英文和訳ってやつですね。慣れるとこれはこれで面白いです。

翻訳モノはダメって人の気持ちもわかりますが、わたしは結構こういうのもイケるくちです。

シドニィ・シェルダンあたりから格段に翻訳モノは良くなりましたよね、超訳なんて言われるわけです。



◆子供向けと大人向けはだいぶ印象が変わる



ルパンのシリーズは小学生の頃図書室ですっかり読み漁りました。

ですがそれは子供向けにわかりやすく書きおろされていたバージョンで、大人向けのものは上記のような文体なので読むには結構な根性が要ります。印象も変わりますし。


でもどちらもそれぞれの世代にきちんと入ってくるというか、どう描かれてもやはり変わらずスマートでカッコイイ「怪盗」なのです。



 

世紀のヒーローみたくイメージ持っていますが、実はルパンはたいへん人間臭いです。

この奇岩城では恋するルパンが見られます。

おなじみガニマールとホームズさんもご出演なさってます。


逆転につぐ逆転という構図も刺激的ですし、期待通りで期待はずれのラストもよかったです。

 

 

ルパンはガチガチの翻訳内容からでさえ情景が見えるようなモノですばらしい娯楽作品だと思う、そう、娯楽なんだよね、文学じゃなくて。

 

ってなんか書き口も翻訳文みたいになってます。

 

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迷路 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
キャサリン コールター
二見書房
2003-07-25



◆鉄板のおもしろ要素「FBI」

 

キャサリン・コールター著の「迷路」。FBIを舞台にした長編ラブサスペンスです。


ラブサスペンスってカテゴリの呼び方もどうかと思いますが、なかなかじょうずな呼び名が思いつきません。


活発で行動的な主人公と、序盤で出てくる小憎らしい感じの上司とが恋に落ちるまでそう長くかからないだろうと思っていたのですが、これが意外とじれったかったです。

いかにもな感じの殺人の舞台になる「迷路」の設定自体は、結局最後までいまひとつ「映像が目の前に広がるような」感覚にはなれなかったですが、ところどころの描写は映画のワンシーンのようでドキドキハラハラしながら楽しめました。

 


◆映像化したらより面白そう



映画化したら文字通り息もつかせぬ展開、なのだろうと思えましたが、文字だとむしろ唐突感が大きくてちょっとバタつき感がありました。あれ、これどういう状態?と思ってページを戻ることも数回ありました。


翻訳ものですし、そもそも舞台も想像がつきにくい異国の地ですので、なかなかダイレクトに伝わりにくい部分はどうしてもありますね。


むしろそれでもこれだけ楽しく読めるというのはたいしたものだと思います。



◆女子向けの冒険活劇



ラブを基軸としたいわゆる女子向けの冒険活劇系と言っていいかもしれません。

子供の頃に読んでた少女向け小説を彷彿とさせました。


女性が読むほうが圧倒的に楽しめるのではないでしょうか。

一気にラクに読めますし、世界に埋没できれば幸せ物質が脳内に出る感じになります。


「洋モノ」(←言い方!)はたまに読むと、時間を忘れて夢中になれますね。


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舟を編む
三浦 しをん
光文社
2011-09-17



◆第9回(2012年)本屋大賞受賞



もう読み終わってからだいぶ経つんですが、書こう書こうと思ってるうちに今に至ってしまいました。

だいぶ話題になっていたので一度は読みたかった三浦しをんさんの「舟を編む」です。

 


 

 

おもしろかったです。

想像以上にライトめな読感で、すらっとさくっと読めました。

以下ざっくりした感想です。

 

 

◆編むもの=言葉の海を渡るための舟



最初は「漁師さんの話」かと思ってました。アホかわたし…


辞書作りに情熱をかける男たちのお話。

辞書を作るという限りなく地味で果てしない作業にスポットを当て、魅力的なキャラクターで話をじょうずに引っ張って行ってくれます。


もっと文学クサイものを想像していたのですが、全然ライトです。

軽快で楽しく勢いに乗って読めます。

キャラの立ち過ぎ感は否めませんが、文体とはぴったりくるので違和感はありません。

 

 

作り上げようと何年も何十年も取っ組み合う辞書の名前は「大辞林」や「広辞苑」のような「大渡海」。

なるほどだから「舟を編む」。

そして主人公はクソ真面目な馬締。

もうこの設定だけでご飯3杯イケます。技あり一本。

 


◆言葉の難しさ面白さを再認識


 

これを読んでいる間「辞書を作る」ことについてずいぶん考えていました。

本文中にも幾度となく出てきますが、簡単な言葉ほど説明するのが難しいですよね。


定番のものだと「右」をどうやって説明しますか?


「左」の反対?お箸を持つ方?北に向かって東側?南に向かって西側?


どれが正解とかではなく、伝えようとする側が「読む側がどう思うか」を常に想像しながら作り上げていくのって、ほんとに途方に暮れるくらい大変ですよね。

最高に面白い仕事だけど、最高に大変です。



自分の持ってる「言葉のイメージ」は必ずしも他人が持ってるそれとは一致しない、ってことと、それを擦り合わせる作業がどれほど大変か、ってことを改めて感じさせてくれる本でした。



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