乱読派の読書メモ

本好きの本好きによる本好きのための読書記録

SF・ファンタジー




◆「攻殻機動隊」の押井守氏の作品


映像系の方の本です。押井守氏著。



映像系の筆とあって、アクションを期待してしまう気持ちは否めなかったのですが、そういったものはほぼ皆無です。

無色透明とは程遠いどぎつさ。

黒と赤にべっとりと血塗られた、不快感すら覚える印象です。



小説と呼ぶべきか惑うほどのぎっしり詰め込まれた文字情報からは、硬質で頑固でオタクなインテリの臭いがプンプンします。



◆「知的挑発」という表現に納得



語るべき内容部分としては興味深いのですが、いわゆる「無知を見下したスタンスからブツブツと自分の知識を壮大に語る」オタクの性質そのままの物語で、どこまで読んでもいっこうに盛り上がってこず、読了までの道のりは正直キツかったです。


作者の挑発的とさえ思える延々と攻撃的な講釈は、仮に押井氏が好きな人でもイラッとするんじゃないでしょうか。



ただこれ、意図して書いているとしたらすごいです。大変なことです。

この本を紹介する文章をどこかで読んだのですが「知的挑発」という言葉が使われていました。

なるほどすごくしっくり来ます。だとしたら作者は意図して新しい何かをやろうとしたのかもしれません。


でも、もう一回読めと言われたら…結構キツいです。



◆世界観は面白い


設定自体は奇想天外とまでは言いませんが、しっかり工夫もされています。
ただ、物語の展開の仕方があえて動きが少ないというか精神世界のほうへばかり行ってしまうため、いわゆる本を読んだ時に感じられる「脳内で映像化される感じ」があまり得られません。


とにかくぎゅうぎゅうに詰め込まれた言語情報があとからあとから怒涛のように押し寄せてくる、感じで、読み手側の処理速度が追いつかないというのはあるのかも。
逆に言えば処理速度が追いつく方にとっては、濃密で読み応えのある作品、なのかもしれません。


言わんとする、描きたい、世界の感じとか、作者の感性とかはどちらかと言うと好きな方です。
面白いとも思えます。
ただそれを文字で与えられるのは、受け手側のキャパによっては苦痛になりえます。


仮に「実際に会ってこの本の中に書かれていることについてディスカッションをする」ことを想定してみると

「すごく面白いけどすごく疲れる。もうちょっとなんとかなるよね?」

という感想をわたしなら持ちます。つまりそれがそのまま、この本を読んだ感想と言えますね。


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マボロシの鳥
太田 光
新潮社
2010-10-29


◆毒舌が売り、爆笑問題・太田光の小説デビュー作


爆笑問題自体は好きで、その名義で書かれているものも過去にいくつか読んでいます。

筆の質はとても高く、たくさん本を読んでらっしゃるんだろうなと感じられます。


でも、毒舌キャラの太田さんを期待して読み始めると文字通り肩透かしを食らいます。

ふんわりとやさしい印象の寓話の数々。毒舌なんてどこ吹く風です。


◆ところどころに個性は滲み出ている
 

全9編の、それぞれ独立した短編集。

多少オリジナリティには欠ける印象はありますが、表題作にはよく個性が出ていました。

何が書きたいのか、が直球で伝わってきます。


ただ、ストレートすぎるあまり、ところどころくどいと感じる部分もありますね。


個人的には講談調の作品がもっとも気に入りました。

すばらしいリズム感と疾走感、コレでストーリーがもうちょっと骨太だったらなおよかったが、今後に期待です。

色物一本ではなく今後もやってほしいスタイル。何度も声に出して読みたくなります。


◆やさしくて美しい寓話の数々だからこそ…


どの短編も、愛とやさしさに溢れ、シンプルでストレート。
書き手の太田さんをテレビなどで見てその人柄に触れていると、文章と人柄がちょっとじょうずにリンクできない感じを受けます。

「太田さんの文章」を期待して読むとイメージとかけ離れ過ぎていて退屈に感じるかもしれませんし、「誰でもない誰か」が書いたものとして読むと、少し物足りなさを感じる部分もあります。

ただ、人生の美しい好ましい部分を懸命に描こうとする意志は伝わってきて、とてもとても美しい本であったことは確かです。

子供の頃に読んでいたら、もっともっと素直にすてきな本だった!と言えるのかもしれません。


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